今回ご登場いただくのは、現在21歳と11歳のお子さんを持つ髙松さん。家庭と仕事のバランスや、完全リモートで働く現在に至るまでのお話をお聞きしました。
profile/ 髙松綾子さん:株式会社エスケイワード ※2023年1月現在
趣味が高じて抜擢され、デザインの道へ
「ワーママ歴20年」という髙松さんは、これまで正社員・フリーランス・パートと様々なワークスタイルを経験。ウェブサイトの企画・制作や、企業のコミュニケーション支援を行うエスケイワードに入社し、4年経過した現在は、週3日勤務の完全リモートという形でデザイン業務を行っています。
─ 現在の仕事内容を教えてください。
ウェブサイトで使用するキービジュアルの制作や図版の作成、企業の特設サイト等のデザイン制作支援が多いです。定期的な案件に関しては、次に受注したときにも活用しやすいデータの作り方や、前回のデザインとのバランスも考えて作成するなどの工夫をしています。また、最近は経験の浅いメンバーに対するデザインの監修や、技術的なレクチャーをすることも増えてきました。そのため、自分より若い世代の方たちの役に立つようなことを伝えたいと思っています。
─ “役に立つ”というのは特にどんな部分を意識されてますか?
例えば、メンバーのデザインのチェックをする際に、デザインそのものの修正だけでなく、別の制作物でも役立つような構成や、アプリケーションの上手な使い方などを伝えるようにしています。また、技術的な問題については「今回の場合はこれがベストだけど、別のシチュエーションでは違うやり方が効率的だよ」といったような、伝える相手の“次に役立つ知識”を、意識して伝えるように心がけています。
自分自身が元々、働きながらデザインの知識やツールの使い方などを身につけたので、「できなくて不安な気持ち」は凄く共感できるんです。自分もそういう時期があったからこそ「何か助けられることがあれば」と考えて、メンバーをお手伝いするようにしています。
─ 元々デザインの仕事をしていたのではないのですか?
昔から絵を描くのは好きだったのですが、デザインの学校には通ってはいませんでした。20代の頃、雑貨メーカーで初めて企画・デザインの仕事に関わるようになったのですが、最初は出荷のアルバイトをしていたんです。当時私は自分で作ったTシャツを毎日着ていて、それをみた社長や上司が、新しく立ち上げる企画部に、と声をかけて下さったのが始まりです。
20年程前の当時はパソコンが使えなかったのですが、声をかけてもらったチャンスを生かすべく、手書きの企画書を何枚も作り「こんなアイデアがあります!」と社長に持って行ったりしました。「アイデアとやる気はあります!」というアピールをして、立ち上げから一緒にたずさわったことから、デザインの道がスタートしましたね。
発達障害の子を持つ親として、「今の私」ができること。
─ 現在の働き方を選択している理由についてお聞かせいただけますか?
実は20歳の時に出産をしていて、娘を育てながら働き始めたのですが、数えてみたらワーママ歴20年以上になります。
雑貨メーカーでの企画・デザインの仕事は、正社員として勤めていたのですが、正社員は楽しくやりがいがあり、成長できる分、時間がなく責任も重い。仕事が頭から離れないこともあり、私の性格的に少なからず家族を犠牲にすることがありました。現在はその状況を避けたいと思い、家族との時間を第一に考えて“完全リモートで時短勤務”という働き方を選択しています。
もちろん今も責任をもって仕事をしていますが、正社員でフルタイムで働くより、余裕をもって働くことができています。ベストな働き方は人それぞれだと思いますが、今の私にとって無理せず楽しく働けているので、自分の選択として、この働き方がとても気に入っています。
─ ワーママ歴20年!仕事と家庭の両立で大変なことは何ですか?
実は現在小学5年生の息子は発達障害があり、ホームスクーリング(学校に行かず家庭で学習を行う教育方法)を行っているんです。去年は順調に学校に通っていたのですが、クラスが変わるなど環境が変化するたびに、調子を崩してしまうこともあります。アップダウンのある子どもの学校生活をサポートし続けられるのは、現在の働き方ができるからこそだと実感しているので、本当にありがたい仕事環境だと思います。
たまたま、コロナでリモートの働き方が普及したという背景はあるのですが、私としてはこのような働き方ができる、良い時代に子育てができているなと感じています。
─ ホームスクーリングではどんなことをされているのですか?
教科書を見て私が教えることもありますが、本人に興味があるときが一番脳が発達してくるので、彼がやりたいこと・興味があることを元にして、学びを深める方法を模索しています。
─ 例えばどんなことをされるのでしょうか?
つい最近、信玄餅をお土産で買った際に「500周年」と書いてあったんですが、「え?本当に500年?」と思い、何かの見間違いではないかと調べてみたら、本当に500周年だったんです。そこから息子がその時代に興味をもったので、500年前の日本についてや、信玄餅についてスライドにまとめたら良いのではないか、という形で自分で調べさせたりしました。本人の好きなことから「どういう風に、何が学べるか」というところに重きを置いて、自分で調べられるようなテーマを選んでいます。
体験も重視しています。三角形の勉強となったら「三角形は最強の形だから、三角形でできている建物を見に行こう」とか。面白くて興味をそそるような方法を、できるだけ取り入れています。
自分のため、家族のための選択。
─ 現在40代。20代、30代と違いは感じていますか?
40代になってから、自分の内面が大きく変わったのを感じています。めちゃくちゃ楽に生きれるようになったというか…(笑)
─ どういうところで感じますか?
以前の自分は、会社の人に対して弱い自分を見せられなかったんです。おそらく、息子のホームスクーリングも「何とかして早く仕事に復帰しないと」と、息子を学校に行かせることに必死になっていたと思います。しかし今の私は、それもありのままの彼の姿だなと自然に受け入れ、「じゃあこれから流れていく時間の中で私ができることは?」と考えられるようになりました。
自分の都合とは関係なく、サポートを必要としている人に対しては、きちんと手をかけ、目をかけて、時間もかけていく必要があります。おそらく、子どもたちにとっても私にとっても、今は人生の中で大事な時期だ、というのが40代になってからスッと受け取れるようになりました。
─ 何かきっかけがあったのでしょうか?
そうですね、40歳になると同時に娘が20歳になったんですね。ワーママを始めた当初、母子家庭だったこともあり「娘の成人」というのが、私の中の大きな目標だったんです。
その彼女が、まだ学生ではあるものの成人を迎え、目標がひとつ達成されたことで「新しい角度でものを捉える」ことができるようになったのかもしれません。
─ 今後の働き方については何か考えていますか?
今後については、自分が「こういう風に働きたい、こうしたい」というよりも、その時の家庭の状況を見て、働き方を調整していきたいと思っています。
今まで働いてきて、正直自分の時間が全くないと感じることもありました。ただ、40歳を超えたくらいから「今この瞬間にやりたいから、これをしているんだな」と思えるようになりました。仕事も家庭も、自分に降り注いでくる課題が、最初からやりたかったこととは違うかもしけれないけど、受け入れて進めるようになったんですよね。
なので、息子が人より少し手がかかるということも、私に足りていない部分や、今まで苦手で目を背けて逃げてきた部分を「正面から立ち向かいなさい」と言われているような気がしていて。これは「私の問題」と受け取り「どういう風に、どこに持っていこうか」と考えていくのが、これからの楽しみでもあります。
同僚からみた、髙松さんの“ココがすごい ”!
チーム内で「デザインで分からないことは髙松プロに」と言われるほど、メンバーからの信頼が厚い髙松さん。後輩からも「いつも明るく朗らかで、技術的に分からない部分や、デザインのブラッシュアップを丁寧に教えてくれる」と評判です。積極的にコミュニケーションを取り、チームの取りまとめを行うなど、社内のより良い環境づくりに一役買っています。
インタビュー・執筆・編集:菅野瑛子 (株)エスケイワード