組織の名脇役にスポットライトを当てるメディア

インタビュー

銀行からスタートアップへ。高い専門性が社会から「求められる力」となる。

今回ご登場いただくのは、クラウドワーカーを活用したSaaS事業を展開する株式会社うるるの近藤浩計さん。株式上場を主導し、現在Co-CFO(共同最高財務責任者)として責務を担う近藤さんが、これまでどのように経験を積んできたのか、またこれからのキャリア像について伺いました。

Profile
近藤 浩計さん:株式会社うるる
取締役Co-CFO
※  2023年1月現在

上場準備のために、銀行から転職

―近藤さんはいくつかの金融機関を経て、2015年にうるるに入社されています。転職のきっかけは何だったのでしょうか。

うるるの前には中國信託商業銀行という台湾系の銀行にいました。そこではM&Aの取引をサポートするアドバイザリーの仕事をしていたのですが、そのお客様のうちの一社だったんです。仕事をしていく中で仲良くなり、その後、当社が上場を目指すことになった際に「一緒にやりませんか」と声をかけてもらい、入社しました。ただずっと社員だったわけではなく、入社から1年後、業務委託契約に変えてもらい、上場準備に携わっていました。

―一度退社して業務委託になられたのですね。その後で再び入社して現在はCFOを務めていらっしゃいます。これはどういった流れだったのでしょうか。

入社後はうるるの仕事だけをやることになりましたが、そうした状況になってから、私はたくさんの会社と接することが好きだったと気がつきました。新卒で働いていた会社は中小企業にお金を貸す仕事でしたが、多くのお客様がいましたし、前職のM&Aのアドバイザリーの仕事でも、本当に色々な会社と関わっていました。やはりそういう仕事がしたいと思い、退職をしたんです。ただ一方で、上場準備をするために入社をしたので、それはやり遂げる責任があると思い、業務委託で残ってサポートすることにしました。

CFOになったのは、2017年の上場後に当時のCFOが事業部門に戻ることになり、次のCFOとして声がかかったからです。それで2018年にCFOとして再度入社しました。現在はIR活動や、法務、財務、M&Aの一部を行っています。

―これまで金融業界でキャリアを積んでこられた一方で、会社の上場を内側からサポートするのは初めてのことだったかと思います。上場準備は苦労もたくさんあったのではないかと思うのですが、いかがでしたか?

まず、上場会社にふさわしい会社の仕組みを作るのが大変でしたね。その中で、社内の業務フローを変えなければならないところも出てきます。自分一人の作業で済むわけではないので、メンバーに協力してもらったり理解してもらったりということも必要になります。また、上場をするために証券会社や東証の審査があるのですが、膨大な数の質問事項があるわけです。その対応も大変でした。

―上場が仕事においては一つの大きな山場という感じもしますが、そういう感じはありますか。

実はそんなことは全然なくて。上場準備は作業こそ多かったですが、プロジェクトのような感じで進めた側面があります。ただ上場後はステイクホルダーが一気に増え、マーケットとの付き合いもあり、そちらの方がはるかに大変だと思いながらやっています。

組織の中で「自分じゃないとできないこと」を減らしていく

―近藤さんは今年40歳になるということで、30代はうるるで過ごした時間が大半だったという感じですよね。30代を振り返ってみていかがでしたか。

20代はいろんなことを学んで、自分はある程度仕事ができると思っていましたが、そんなことは全然ないんだというのに気づかされたのが30代前半から中盤にかけてでした。学ぶことはまだまだたくさんあるし、できないこともたくさんあるし、自分自身の課題にも気づきました。あとは30代前半と後半では全然違うと感じるのが、体力です。体力が落ちましたね。本当に昔みたいな働き方はできないなと感じます。

―確かにそれは誰しも感じるところですよね。例えば、仕事を誰かに任せるなど、体力的なものが落ちたことが仕事に影響を与える場面もありましたか。

ああ、それはその通りですね。自分がやったら仮に100点になるものでも、人に任せると必ずしもそうじゃなかったりするじゃないですか。120点を出してくるケースもあれば、80点、70点であったりする時もあります。けれどポイントをしっかり押さえていれば80点、70点でもOKとして組織をうまく回していく、そういった仕事の進め方は少し身についたかもしれないですね。

―もともとたくさんの会社と接するのがお好きだった近藤さんが、事業会社に絞ったことは、近藤さんのキャリアの中でも大きな分かれ道だったのでしょうか。

そう言われると確かにそうかもしれません。うるるにはトータルで8年と、結構長くいますが、組織の中で自分の責任を果たしたいという気持ちがあったんですよね。CFOをお受けした時も、自分しかいない、投げ出すわけにはいかないという気持ちでした。

一方で「自分じゃないとできないこと」がたくさんある状態が、組織にとっていいのかというとそうではない。それを少しずつ減らしていくための仕組みづくりであったり、人材育成だったりは必要かつ重要だなと思っています。逆説的に言えば、自分じゃないといけないことがゼロになったら、きっと私は当社を卒業するのでしょうね。

これまでになかった新しいやり方でIRを実践

―今の近藤さんは、仕事のやりがいをどういったところに感じているのでしょうか。

自分自身が成長している実感があるというのが一つと、自分のまわりにいるメンバーと会社が成長していることも、やりがいにつながっています。あとはこの2年ほど私が中心となってIRに力を入れていて、過去に他社が行っていなかった新しいやり方を工夫しているんです。IRにかけられる予算はほぼありませんが、お金をかけずとも工夫すればいろいろできるもので、そのアイデアを自分で考えて実践するのが楽しかったりしますね。

―IRの工夫というと、どんなものがあるのでしょう。差し支えのない範囲で教えていただけますか。

例えば上場企業が4000社ある中で、当社は圧倒的に無名に近い会社です。それをどうやって知ってもらうかというところで、SNSを有効に活用することが一つあります。また、個人投資家の方々が開いている勉強会が全国各地にあるのですが、そこに参加し、会社を紹介させてもらうこともあります。IR支援会社に依頼すると集客にもお金がかかりますが、勉強会を主催するような個人投資家の方はある意味でインフルエンサーなので、「勉強会にうるるが来ます」と告知してもらうこともできます。あとは、個人投資家と機関投資家は情報格差があるとよく言われますが、Peing質問箱というサービスを使って、個人投資家がネット上でオープンに質問できる機会を作っています。こうしたIRの新しいやり方みたいなものは、IR同士の横のつながりでシェアしています。

学び続け、本には書かれていない専門領域を身につける

―30代は学びの多い時期であったかと思いますが、これから40代になるにあたって、40代のキャリアのイメージをどんなふうに持たれているでしょうか。

私は正直、何もイメージできていないんです。きっと皆さんいろいろなキャリア像を持っていらっしゃる気がしますが、子どももまだ小さいので、より大変になっていくだろうなということぐらいです。目の前のことにがむしゃらに取り組むので精一杯という感じで。

ただこれから体力が落ち、働ける時間も短くなっていく中で、自分が楽しいと思えないような仕事はなるべくしたくないですよね。ではどうしたら楽しいと思える仕事ができるかを考えると、自分の力を発揮できていたり、仕事を通じて学びや成長実感があることが、「楽しい」につながったりする。そういうことでないと、40代のキャリアを築くのは難しいんじゃないかと、なんとなく思っています。

―近藤さんはこれまでの金融機関での経験があって、また上場準備という大きな経験もお持ちです。40代の学びという面で、近藤さんがこれからさらに学んでいくとしたら、どういったことがあるしょうか。

できればもう一回大学に行ってみたいとは素直に思いますよね。チャンスがあればMBAも取りたいし、英語も時間をかけて学ぶ機会を作りたいなと。英語ができればもっと仕事の幅が広がるんだろうなとは思います。

今もまだまだ毎日学んでいる実感があり、学び続けることが大事かなと思います。学び続けることで、できることが広がっていきますよね。できることがたくさんある人の方が、いろいろな人から声をかけられます。人から求められるような力をつけていくことも、40代に求められるのかもしれないですね。

―学び続ける上では、どんな方法があり得るでしょうか。例えば本を読むといったことでしょうか。

他社のCFOと対話するなど、今はまわりの人たちから学ぶことの方が多いですね。20代から30代前半くらいはよく資格取得に取り組んでいて、確かにその時には足りない知識を本で補っていました。ただ、だんだんと学びたいことは本に書いてないことばかりになってくるんですよね。

IRを始めた当初も本を読んだりして、勉強になることは多かったんですけど、直接的に参考になることは少なくて。というのも当社は「小型株」と呼ばれる部類に入るのですが、実は時価総額が高くない会社でIRをやっているところが当時ほかになかったんです。IR担当の方が書かれた本はありましたが、うちの会社には当てはまりませんでした。これは自分でやるしかないと思って、データを見ながら自分で分析したり、いろいろ人に話を聞きに行ったりと、実践の中で学んでいったところがあります。

―小型株のIRに関して、近藤さんは世の中にまだ出ていないノウハウをたくさん持っているということですよね。ある意味で専門家のような。

専門家というと偉そうですが(笑)、でも確かに、いろいろな会社から話を聞かせてほしいと連絡をもらうことが増えました。私がやっていることは、新規事業開発に近いのかもしれないですね。誰もやっていない、市場にすらまだないものを試すということを、IRで実践しているのかもしれません。今話をしながら思い出しましたが、小型株のIR活動についてはnoteにも書いたんです(註:2022年4月の投稿記事「赤字の小型銘柄が1年間お金を掛けずにIR活動したら、思っていたのと違った結果になった話」)。当社と同規模の会社のIR担当の方から質問をいただくことが増えたので、自分がやったことを公開しようと思って。

―いいですね!自分の専門領域や強みを見つけることは簡単ではないと思いますが、仕事でいろいろな経験を重ねることによって深い専門領域を持たれたというのは、すごく勇気づけられる話だと思いました。

ありがとうございます。結局、今の自分を形づくるにあたって、土台は過去にあるのだと思います。40代のキャリアはこれまでの土台を使って、そこに積み重ねていくことになるのでしょうね。それをどう積み上げていくかを考えながら、やっていくのだと思います。

インタビュー・編集:扇本英樹 (株)Sparks
執筆:梅田梓

RELATED

PAGE TOP