普段、読みものをみなさんにお届けしている私たち編集部。私たちももれなく、読みものに支えられてきました。
今回は、『年末年始に読みたい「人生にじんわり効く一冊」』と題して、編集部メンバーの人生にじんわり影響を与えた1冊をみなさんにご紹介します。
この1年を駆け抜けた方も、来年から走り出そうとされている方も、この年末年始で一呼吸、読書からご自分を見つめてみてはいかがでしょうか。
伊藤のおすすめ
「ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か」─ エリヤフ・ゴールドラット (著)
元は古い本なのですが、それでも今の時代の仕事にも通ずるところがあります。
工場の再生を行うためにマネジメント理論を実践していく話なのですが、物理学者が書いているという点も興味を持ったポイントです。
「企業の究極の目的とは何か」というサブタイトルが、難しい本なのかな?と思わせるのですが、小説のようなストーリー仕立てで、かなり読みやすい本なので、どんどん読んでいくことができます。
マネジメントの難しい本を読むのはちょっと。。。という方には、入りやすい本だと思います。
村田のおすすめ
「運動脳」─ アンデシュ・ハンセン (著)
集中力に記憶力、創造性、学力…私たちが向上させたいと願うこれらの能力を司るのが「脳」。その脳にとって最高のエクササイズはクロスワードパズルではなく「運動(身体を動かすこと)」らしい。
「え?」と思ったあなたにオススメしたいのは、『スマホ脳』を書いた著者による本書。読んだら「運動せずにはいられない」衝動にかられるほど、知的好奇心を煽るキーワードで満ちています。私もたまたま書店で手にとり、目次をパラパラとみただけでそのままレジへ直行したほど。デスクワークにテレワーク、運動不足になるきっかけに溢れている今こそ、私たちに必要なのは「運動しなくちゃ」と思わせてくれる説得力のある一冊です。
家本のおすすめ
「西の魔女が死んだ」─ 梨木香歩 (著)
梨木香歩さんの小説で、主人公が祖母の家で過ごし、成長を遂げるストーリー。
私は二度目の育休中に読みました。
「なんでも自分で決める」ことが祖母からの教えですが、これは意外と難しい。
私自身も、自分の人生を生きてきたつもりでしたが、果たしてどれくらいのことを自分自身で決めてきただろうかと、考えてしまいました。
特に子どもを産んでからは、子どものことが優先になりがち。でも、子どもを持つこと自体も自分で決めたことだと思えば、見え方も変わってくるのだろうなと思いました。
いろんなことに振り回されている!なんて感覚をお持ちの方にオススメの1冊です。
沢田のおすすめ
「自分に語りかける時も敬語で」─ 秋田道夫 (著)
プロダクトデザイナーの大御所の秋田道夫さん(交通系 Suicaチャージ機とかデザインした人)の初の書籍です。
タイトルに一目ぼれしました。仕事やキャリア、人生に悩んだりした時に読んでもらえるとフトした気づきが多かったりします。
機嫌よく日々を過ごすための著者の考えに触れることができますし、色々詰め込んだり学んだりしているような人には目から鱗だったりと、本メディアのメイン層な方には是非読んでもらいたいです。
特効薬というよりは、まさに”じんわり効いてくる”良い書籍です。
扇本のおすすめ
「生きる はたらく つくる」─ 皆川明 (著)
“ミナ ペルホネン”のデザイナー・皆川明 さんが語る、働く哲学。
ミナ ペルホネンは、「せめて100年つづくブランドに」という想いを込めて皆川さんが2003年に創設したファッションブランド。
少年時代から50歳を超える現在までを振り返りながら、シンプルな文章で仕事のよろこびが語られています。6畳のフローリングの部屋をアトリエにしたブランド初期には、市場でマグロをさばくバイトをしていたり、現在の洗練されたブランドからは想像できないようなエピソードも語られます。
ミナ好きではない方にも読んでいただきたい、心に染みる一冊です。
山岸のおすすめ
「深夜特急」─ 沢木耕太郎 (著)
深夜特急は、ノンフィクション作家の沢木耕太郎が、インドのデリーからロンドンまで乗り合いバスで旅した時のことを書いた紀行文です。刊行後は「バックパッカーのバイブル」と称され、多くの旅人に影響を与えたと言われています。
バックパッカーの方にとっては「こんな旅がしたい!」とワクワクする内容だと思いますし、私は「擬似体験できる」という楽しみ方で読んでいました。とにかく安い宿を探し、売春宿に泊まったり、ギャンブルにハマってみたり…自分には絶対できない旅が体験できると思います。
疲れて考え方が窮屈になっている時に読むと、視界が開けるような、もっとゆったり構えて自分の人生を見つめ直したくなるような、そんな内容でした。
萬ヶ原のおすすめ
「Self-Reference ENGINE」─円城 塔(著)
彼女のこめかみには弾丸が埋まっていて、我が家に伝わる箱は、どこかの方向に毎年一度だけ倒される。老教授の最終講義は鯰文書の謎を解き明かし、床下からは大量のフロイトが出現する。そして小さく白い可憐な靴下は異形の巨大石像へと挑みかかり、僕らは反乱を起こした時間のなか、あてのない冒険へと歩みを進める―軽々とジャンルを越境し続ける著者による驚異のデビュー作。
事実を書き換え続けるAI。時代劇風の茶番劇。Self-Reference ENGINEは静かに波打ち際に横たわる。円城 塔の原点にして至高の、思考のSFである。
作 円城 塔:SFや前衛文学などの意匠が混在する作風である。独特の論理展開、奇妙な理論を真面目に突き詰める文章が特徴のひとつである。
菅野のおすすめ
「木曜日にはココアを」─ 青山美智子 (著)
世代も立場もバラバラな12人の主人公の視点から、それぞれの何気ない日常をオムニバス形式で綴る、12篇の連作短編。
“僕”が働く川沿いの桜並木のそばに佇む、喫茶店「マーブル・カフェ」を中心に、東京とシドニーが舞台になっているのですが、次々と関係のある人へと話が紡れていき、ラストは見事なまでの伏線回収。奇跡のように少しづつ、全てのお話が繋がっています。
一章はとても短く、章ごとに友情・恋愛・仕事…と違った話で構成されているので、普段本を読まない方でも読みやすく、楽しめると思います。
登場人物がひとりひとり、どこかで繋がっていて、誰かの日常に起きた小さな出来事が他の誰かに影響を与えていく。読み終えた後に温かいココアを飲んだ時のように、ほっこり優しい気持ちに、ちょこっと元気になれる小説です。
編集:となりのイトウさん編集部