組織の名脇役にスポットライトを当てるメディア

対談

[オープニング対談]となりのイトウさんとは? これからの40代を応援するWebメディアを立ち上げる理由

悩める40代に贈るWebメディア「となりのイトウさん」。初回は立ち上げメンバー3人に、座談会形式でこのメディアにかける思いを語ってもらいました。「イトウさん」はあなた自身かもしれませんし、身近なあの人かもしれません。ゆるく雑談形式でお届けしていきますので、気軽に読んでもらえたら嬉しいです。

座談会参加者profile/
沢田圭一さん:「となりのイトウさん」発起人/株式会社エスケイワード 取締役COO
扇本英樹さん:「となりのイトウさん」編集長/株式会社スパークス代表取締役
伊藤智彦さん:株式会社エスケイワード TOKYO BRANCH プロジェクトマネージャー
(記事内は敬称略)

チームの名脇役にスポットライトを当てたい

40代が主役のWebメディア「となりのイトウさん」が始まります。きっかけは?

沢田:自分たちで発信するメディアを創りたい、という思いは以前からありました。「どういうものなら見てもらえるか、誰に見てもらいたいか」を考えながらさまざまなメディアを見たり読んだりしたのですが、目に飛び込んでくるのはカッコよく語る‘キラキラした人たち’やバズってるワードたち。素敵だな、と思う一方で、どこか他人事に思ってしまう自分がいて。

確かに若い世代に向けて「ここで働きたい」と思ってもらう宣伝としてはありだと思うんですけど、「その会社を、ビジネスを、プロジェクトやチームを支えている人たち」って、実はもう少し上の世代なんじゃないかな、とふと思いました。いわゆる‘エース’が輝く環境を裏方として作り上げてる人たち。

彼らは‘ひと世代前’だからもう終わりなのかというとそうではなくて、いまも魅力的な仕事をしている。そこに焦点を当てるメディアはどうだろう、と思いついたとき、以前観た「バイプレイヤーズ」というドラマのイメージが浮かんできました。

主役じゃないけど、名脇役たち。彼らを紹介するメディアを創れたらすごく魅力的になるだろうし、モヤモヤしながら‘まだまだやれる’と思っている40代の働く仲間たちが関心を持ってくれたらいいな、何より私自身もそういう人たちの話を聞きたい。その想いで立ち上げました。

— 「イトウさん」とは?

沢田:身近にいる40代以上の方々の総称です。あなたかもしれないし、隣のあの人かもしれない(笑)。

キャリアについて、皆で雑談してみたい

— 沢田さんのアイデアを聞いて扇本さんはどう思いましたか?

扇本:実際に私も40歳を過ぎてキャリアの行き詰まりを感じていたので、このテーマが響く40代は結構多いんじゃないかと思いました。20代30代で成果を積み上げてきた人もいると思いますが、「体力勝負で頑張る」ことが40代ではできなくなってくるし、一方で50歳や60歳を意識する自分に気づいたりする。そんななかで「自分のキャリアを改めてどうしよう」みたいなことを考えるメディアは、あるようでないような気がして。‘仕事で輝く世代’を紹介するメディアに掲載されているのは主に30代の方々が多いと思うんですけど、もうちょっと上の世代で、かつ現役でまだこれからもうひと山超えていきたい、そういう人たちはたくさんいるはず。彼らにスポットライトを当てて、話を聞いてみることがリアルに参考になる、そんなWebメディアを創れたらいいな、と思いました。

— 「40代になってキャリアの行き詰まりを感じた」、具体的には?

ひとつは体力。例えば徹夜などが物理的にできなくなったということ。もうひとつは上流の仕事、影響力の大きい仕事をやりたいなと思ったとき、そこのステップへはどうやって行けるのかがあまりわからなくて。組織のなかで出世していくコースもありだけど、その組織が長く続くかどうかの保証はない。そう思ったときに、組織で出世することに神経をすり減らしていくのはあまり意味がないんじゃないかと思いました。一方で「他になにかあるか」と考えてもわからない、みたいな。そういう感じが行き詰まりだった気がします。

— 現在は会社経営者。どんなお仕事ですか?

扇本:事業ドメインは企業のブランディングです。また縁あってエスケイワードの組織運営支援もしています。

沢田:エスケイワード東京ブランチのクリエイティブユニットリーダーとして、組織運営にご協力いただいています。扇本さんはクリエイティブメンバーとのコミュニケーションがとても上手でメンバーからの信頼も厚いんです。「問い」というアプローチが秀逸です。

読んだ人が‘自分ごと化’できるメディアに育てたい

伊藤さんはどういった経緯でこの企画メンバーに?

伊藤:沢田さんと扇本さんは東京で、私は名古屋本社勤務。このプロジェクトへの最初の声がけは「メディア名を『となりのイトウさん』にしようと思うんだけど参加しない?」。企画内容を聞いて面白そうだなと思いました。「イトウさん」といってもズバリ私のことではなくて「私みたいな人」。伊藤さんは一般的によく聞く苗字で「身近にいるひと」といったイメージです。「いいっすよ、参加します」と言ったら、「じゃ君ペルソナね」と(笑)。

「面白そう」と思ったポイントはどんなところですか?

伊藤:このメディアの主役は「キラキラした人じゃない」ってとこですかね。私も人の情報を見にいこうと思っても、メディアに掲載されている人たちが眩しすぎて(笑)。確かにすごいなって思うんですけど、自分がそうなりたい、というより「すごい人」という視点で見てしまうので、なかなか自身に落とし込めない。自分がぺルソナであれば、等身大でいいという安心感というか。また同じように悩みや迷いを抱えている同世代の考え方を聞いてみたいなとも思いました。

仲間づくり、という側面もありますか?

伊藤:はい。私は現在プロジェクトマネージャーという役割を担っているんですけど、40代になって痛感するのはやはり体力。これまでのやり方では先々続かないだろうな、と。新しいプロジェクトの進め方などを体系化したい、という思いを扇本さんと話をしています。そういった話題についても一緒に考えたり学んだりする仲間を増やしていきたいと考えています。

「体力」がキーワードとして挙がっていますが、それはご自身の20代30代と比較して、ということですか?

伊藤:どちらかというと、体力勝負な働き方は、後輩たちから「あの人みたいになりたい、楽しそう」とは思われないんだろうな、という思いです。「あの人だからできている」みたいに思われちゃうとその先がないんだろうな、という危機感です。そこを変えたいな、と。

伊藤さんの現在の仕事内容は

伊藤:拠点は名古屋で、受注した案件が円滑に進むよう、プロジェクトの責任者としてお客さんとのやりとりや品質管理、メンバーの状況把握など全体に目を配っています。昨年度まで組織の管理職も兼任してましたが、今年度からはプロジェクトマネージャーに専念することにしました。今の課題は新しいやり方を追求していくこと。先行き不確実な世の中なので、プロジェクトマネジメントのベストな解を模索しています。

また、扇本さんと出会って発見したことがあります。彼の「問いを投げかける」というアプローチは私と全然違いますし、学べるところは取り入れつつ、私は私のやり方を確立していかないと、と思った時「自分のやり方って何だろう?」と自身に問いかけてみたところ「根性」としか言えない自分に気づいてしまって(笑)。そこを変えていきたいです。

扇本:少し口を挟んでもいいですか?伊藤さんと私は仕事のアプローチが異なる、という点はありますが、プロジェクトマネージャーとしてのスキルや経験値は伊藤さんの方が圧倒的にあります。仕事に対する社内からの信頼も厚いですし、責任感も強い。伊藤さんと話したときに感じたのは、結構自分を追い込むタイプなんだな、と。40代になって体力的な変化をきっかけに、これまでとは違うプロジェクトマネージャーのあり方を、新しい像みたいなことを模索していきたい、と私は受け取っています。

キーワードは「体力」と「サスティナブルな働き方」

沢田さん、なにか思うことありますか?

沢田:「その通り!」とうなずきながら聞いていました。私も40歳超えて体力的にはしんどい。そして自分の中に「すごい人はすごい」と認めないとやっていけない部分もあるし、仕事のスタイル、やり方についても時流に合わせて調整していかないと、と思っています。「おれは昔すごかった、だから今もすごい」って最悪のダサさだよね。昔すごかったのはいいけど、じゃ今はさらにどう変えようとしてるのか、どう進もうとしてるのか、そのあたりを上手く聞き出して皆で一緒に考えられるメディアになると素敵だな、と思っています。

これまでの話から、「体力」と「サスティナブルな働き方」という2つがキーワードになりそうです。そのために仕事を体系化させる視点が必要。

伊藤:頑張る40代のバイプレイヤーズたちは、意外と自分のことをうまく説明できていないのかな、と私は感じています。いわゆる‘キラキラした人たち’って自分を語ることがとても上手じゃないですか。一方、脇役と言われる方たちって、自身のすごさとか才能について自分で把握できていないような。そこを言語化したり明文化することで、足りない部分や諦める部分、逆に伸ばしていく部分の再定義ができるといいんじゃないかと。このメディアがそういうコミュニティになるといいなと願っています。

扇本:あと私が思うのは、仕事の持続可能性を考えたときに、石川善樹さんの『フルライフ』という本の中で「40代は人生の剪定時期、削り取って、カットして残していくってものを決めないといけない」ということが書いてあってハッとしたんです。これまでの成功を支えてきたものが、これからの自分を支え続けるとは限らない。それに気づいたら潔く切り落としてしまうこと大切なんだと。これから育てる芽はちゃんと残しておく。キャリアのサスティナビリティを考える際に、その整理が大事なのかな、と思いました。

40代って、弱みを見せられない世代だったりする?

伊藤:私は30代がそういう感じでした。そして40代は自分の弱みを出していかないとやばい、と思っています。体力的、健康面が急に変わったというか。友人との会話も、どの保険がいいとか、どこの病院がいいとか(笑)露骨に変わったんですよね、自分のなかで。体壊したら終わりなので無理をしてはいけない、と。30代はなんとかまだ大丈夫なフリをできたのですが、今はそれをやってもバレるので、しんどいときはしんどい、って逆にいうようになりました。

なるほど。では殻を破って自分らしく働けるようになった、とも言えますか?

伊藤:そうですね、そのように働かないと、と意識したのが40代と言えるかもしれません。

扇本さんもそうですか?

扇本:私も40代になって気持ちが自由になりました。30代はもっと気を張っていたし、役割を演じる部分が強くあったように思います。今は違うと思えば「違う」と自分の言葉で言える。自信がついてきた証とも言えるかもしれません。この変化は大きいです。

沢田さんはどうですか?

30代は個人的には2つの大誤解がありました。1つは自分が頑張ればなんとか乗り切れるはずだ、という誤解。2つ目は「人は言えば変わる」。悪意があるわけではないんですけど、「でもこうやってやればできるから」「なんでできないの」と言っていた自分がいます。でも40代になり「それは絶対にダメ、最後は全部自分に返ってくる、自分が吹っ飛ぶ」ということを体力の低下とともに感じるようになりました。頭で考えるようには体がついてこない。 でも周りを見渡すと、まるで超人コンテストに庶民(自分)が巻き込まれたように感じて。すごい人はすごいんです。そして、学びも足りないし独りよがりな思考しかできない私は、一度メンタルを病みました。40代前半ですべての思考を組み立て直し、後半となった今、ようやく自然体で仕事に取り組めるようになった気がします。

まとめ

こんな風にゆるく自分語りをしていくことで、新たな発見があったり学びがあったり。皆さんに参加していただくことで、いろんな‘芽’を見つけて育むコミュニティーをめざしていきます。次回からは一人ずつ‘バイプレイヤーズ’をフィーチャーしていきますので、どうぞお楽しみに。

編集後記

上記取材時に扇本さんが紹介した本『フルライフ』(石川善樹著)は、人生100年時代を生きる私たちに、「充実した人生」を実現するためのヒントを示唆してくれる一冊。迷える40代にオススメです。

インタビュー・執筆:コピーライター 村田真美(株)mana代表取締役
編集:となりのイトウさん編集部
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